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すけっち

美術監督協会が申し入れたインタビューを快く受けて下さり、出川理事長、森田郷平さん、ライターの本橋さんと私の4人で成城のご自宅にお伺いしたのは、2009年10月26日の午後でした。

 村木さんが東宝撮影所に入られた(昭和21年)戦後間も無い頃の状況から、撮影所に進駐軍の戦車まで来たという東宝大争議(昭和23年)の頃の事などを約1時間半にわたってお話いただきました。「これで」とお礼を言おうとしたら、
「それでいいのかぁ」と呟かれた。素朴で真面目な村木さんらしい一言だなぁ・・・と耳に残っています。
「口々にお元気だよね」と話しながら帰宅しました。
翌朝、訃報を耳にした時は、正に青天のへきれき。
「まさか!」でした。

 村木さんと言えば、黒澤組。

1948年、松山崇美術監督の下で美術助手として、「酔いどれ天使」で初参加。「野良犬」「生きる」「七人の侍」と続き、1955年の「生きものの記録」から「蜘蛛巣城」「どん底」「隠し砦の三悪人」「悪い奴ほどよく眠る」「用心棒」「椿三十郎」「天国と地獄」「赤ひげ」「どですかでん」 「影武者」「乱」「夢」「八月の狂詩曲」遺作の「まあだだよ」に至るまで、黒澤作品のほぼ総てを美術監督として担当されました。

 黒澤さんとの仕事は、高度な要求に応えられる技量と忍耐が必要になります。ご苦労も多々あった事でしょう。骨太でずっしりとした堅実な作風で、監督の大きく膨らんだ想像力にリアリティを与え続けました。

 昨今、アイデンティティが重視されますが、村木さんの長年の映画美術には終始一貫、村木さんらしさを貫かれた姿と自分の仕事への愛着の深さが滲み出ていて頭が下がります。芸術家肌の気まぐれだけでは、映画美術はつとまりません。

 村木さんは、寡黙で気配りの人でした。美術助手の使い方も上手く、俺についてこいと言うのではなく、各々の個性や得意技を引き出し、褒める時は手放しで褒め上げ、その気にさせる名人でもありました。

 黒澤組の撮影現場には、あらゆる材料が転がっていて、その中から自分で問題を拾い、感性を磨き、深めて行く地道な努力の積み上げを、様々な現場体験を通して教わりました。

 映画のようにタイムスリップしたり、ゴーストになってお会いに行けないのは残念ですが、私の思い出の中には、村木さんの30代40代の颯爽としたお姿や、仕草や、優しさや、厳しさがいっぱい詰まっています。 「椿三十郎」「天国と地獄」「赤ひげ」「影武者」など村木さんの下で、美術助手として思い出深い作品に係わらせて頂き、「夢」では、夢と現実の狭間でその境界は正に厳しい綱渡りの連続でしたが、共同で担当させて頂いた事を誇りに思います。
 黒澤監督とご一緒に、きらほしのごとく名作を残され恵まれた映画人生でしたね。

 ご冥福をお祈りいたします。(享年85歳)



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