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すけっち
通信No.4(2007.5)より

 今、憲法改正の事が色々言われておりますが、この作品は憲法を作ったのはGHQではなくその草案は鈴木安蔵を中心とする「憲法研究会」の民間の学者の人々達が作ったと言う物語です。
脚本をいただいたのが昨年の5月30日です。「クランクインは11月初めです」と言われ、それから資料調べ等をはじめました。
 時代は大正末から昭和21年までと現代とのカットバックです。大変場面が多く、また少ない予算の中での割り振りでかなり悩みましたが、東映(株)の美術部長森田さんの助けによりなんとかやり遂げることが出来ました。感謝の気持ちです。
鈴木安蔵は京都大学の頃いわゆる社研に入っており、治安維持法違反第一号となり刑務所の中で経済の勉強から憲法の道へと進んで行きます。
 撮影セット及びロケセットの数が35杯以上で、セットから話をすると皇居のお堀端の第一生命ビルの中、6階に当時民生局その他が入っていました。マッカーサーの部屋も今現在記念館として残っています。ロケハンの時広報の人が立ち会って下さいましたが、どう考えてもマッカーサーの執務室以外は当時と違うと思いました。
そんな時色々調べて行くうちに一枚の写真が出てきました。それをもとにイメージを膨らませ6階の大会議室を長さ7.5間×5間、高さ2.5間の部屋を作りました。ここでGHQの民生局と政府委員、内閣法政局、白州次郎等が激論を闘わせます。アメリカの星条旗と天皇の菊という対比もさりげなくしました。蛍光灯を机の上ぎりぎりまで下げ、当時の英文タイプライター18台をなんとか集めていただき(吊り下げるクサリがなかなかなく、また色を変えたり、木のブラインドを下げ高さ2間半、巾3.5尺の5口のカーテンがそろわず高さ9尺に)世界を作ることが出来ました。ホイットニーの部屋とある執務室は飾り替えで表現しました。
ホイットニーの部屋にはいただいたであろう日本人形をおきました。(彼は資料によると日本人を大切にしていた)☆「星条旗のことでチョット悩みました。縦がいいのか横がいいのか、本来は横ですがプロポーション的には縦がすんなりおさまるのです。資料を調べて2、3の例を発見しました。」
 丸の内に昔実在した常盤屋も資料が全く無く、唯一92歳の方の聞き取りが出来ただけで全くの創作になりました。
 取調室のイメージは闇の世界です。独房は当時(昭和初期)の豊多摩刑務所のボケた一枚の写真を参考に、壁の引っ掻き傷等をやりまた希望を暗示させる木を一本だけチラッと見せました。
 そして主人公の鈴木安蔵の家です。現在三人の娘さんが健在です。クランクインする前に池袋でお会いして昭和20年頃の家の様子や佇まい等をお聞きすることが出来ました。彼は福島県相馬の出身で家はかなり裕福であったようで、昭和13年に世田谷区下馬に150坪の土地に白壁に赤瓦で女中部屋まである家で、写真も見せていただいたりしましたが、かなりいい家でした。台本のイメージとかなり違うので困りましたが安蔵の性格、趣味等を参考にさせていただき、もちろんのことですが家の佇まいはシナリオのイメージにしました。季節は昭和20年の9月から21年の3月までです。庭がありますので植木の飾り替えをしなくてはなりません。庭の一角に家庭菜園を作りました。
 アクシデントがありました。表は小金井の江戸東京建物園で造園屋さんにお願いして四ッ目垣を2間移動して畑を作り木を植え直し、門と入口は東映から運び手前に砂利を撒きジープをおいて絵を撮りましたが、現像場のミスで少ししか使うことが出来ず本当に悔しい思いをしました、残念です。
 セット撮影は12月中旬です。庭の畑の野菜の種類は苦労しました。梅はラストで狙いたかったのですが、葉もなく大変でした。3月のシーンでいままでの安蔵の苦労、奥さんの内助の功、二人の思い出を満開の白梅、紅梅で世界をつくりました。ナメ用の白梅は生け花用の枝を蕾のうちから美術ルームに入れ、ビニールをかけて暖房を強めにしてなんとかまにあわせ、しかし付ける時には枝がゆれるたびに花びらが一枚一枚散ってゆくので気が気ではありませんでしたが何とか上手く行きました。
 ロケセットでは首相官邸(美術監督の間野重雄さんから資料をお借りしました)、新生社表は静岡県島田市にあるレンガの建物及びコンクリート2階建てで、植込み等で表現し、中は水戸の旧庁舎の四階で壁を運び剥落や調子付けをし、装飾の田畑さんは道具一つ一つ手運びで大変苦労していただきましたがいい世界が出来たと思っております。
 昭和10年の安蔵の家の壁つけ、飾り、憲法の本、昭和初期の神田の古本屋、京都のあるレンガ塀、外省公邸、上野公園、ガード下、福島神社、現代の出版社、安蔵の娘の家、さやかの家、まだまだありますが一つ一つ丁寧に仕上げたつもりでおります。
 金がない所は労力で、そして念じつつそして最後に私を助けてくれた菊池章雄さん、萩原まどかさん・・・装飾の田畑さんには東京美工のワクを超えよくやっていただいたと感謝しています。セット及びロケセットの加工には東映の川村君、大泉美術の人々には大変苦労していただきありがとうございました。おかげさまでいい世界が出来た、と思っております。この映画を一人でも多くの方々に見ていただけたら幸いです。


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