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 「浮雲」 再現セット コメント寄稿
  ≪矢内京子≫ ≪竹内悦子


「浮雲」再現セットに参加して
矢内京子
今回、東京国立近代美術館フィルムセンターでの「生誕100年特集 映画監督 成瀬巳喜男」展に於ける「浮雲」再現セットに参加しました。7月2日にフィルムセンターにロケハンに行き、本当にここで成立するのだろうか?と最初は思いました。というのはフィルムセンターの7階は真ん中にらせん階段があり、約3尺丸の太い柱が2本もあるからです。当初は世田谷文学館用につくられたこの再現セットを、この場所にどう入れ込めば効果的か、お客さんにインパクトを与え、見やすいものにできるか、というのが問題でした。 7月10日、竹中さんと星埜さんとごはんを食べつつ、この入れ込みを考え、竹中さんの意見で奥の二本の柱の位置を壁につけ、ななめにふったら、ということで、後は既存の3尺丸の柱からどれくらい離すか、など決めてやっと図面上での位置が決まりました。しかし毎度のことながら図面そのままというわけにはいかず、建て込み当日の19日もああでもないこうでもないと大道具の佐藤さんを交え、皆で意見を出し合い、なんとか良い位置に決まったと思います。        

再現セットコメント寄稿
この企画に参加できて良かったと思うことは、まずなんといっても、時代を超えて、世代を超えて、成瀬監督の作品をごく一部ながら擬似体験できたことです。それもただ同じものを再現するのではない。50年前の中古さんのデザインを、竹中さんが世田谷文学館用のサイズにし、またアレンジし、なおかつ当時の飾りが多すぎた、ということからあえてものを最小限にし、主人公ゆきこのさびしさを表現した、という新しいセットでもあるところです。完全なるタイムスリップでなく、今に通じている、生きたセットということが、この展示のおもしろさではないかと思いました。
再現セットコメント寄稿
世田谷文学館での展示よりさらにシンプルです。そしてこの光の加減がとても良い感じです。
さらにこの展示でおもしろいことを発見しました。それは建て込み当日に発見したのですが、フィルムセンターの現代的な建物と昭和20年代が舞台の浮雲のセットが妙にマッチしているところです。セットの背景には三角の大きな窓が開けていて、まるで大きな空やもくもく動く雲を背景にしたオープンセットのようだからです。
(写真がないのが残念ですが。)窓の向こうに今時のビルが建っているところもおもしろく、何層にも奥深く全体がセットのようです。三角の窓のサッシ枠に下の道路を走る車が映っていてビュンビュン走っているのもまったく違和感ありません。映画を見て、セットの50年前と今を楽しみ、展示室ロビー全体での朝昼夕、晴れ曇り雨のセットを楽しめる、偶然とはいえ、何重もの楽しみがあるなと感じました。
ここでお気に入りの一枚。
再現セットコメント寄稿

これは夕景?ではなく、夜の7時ころ。壁のピンク色が窓に反射していてまるで夕景。こんな楽しみ方もできます。
最後に、この企画に参加できたことを感謝します。
再現監修の竹中さん、再生のためにいろいろ交渉などまとめてくださった星埜さん、林さん、セット再現と再生に知恵と手を駆使してくださった吉田美術と東宝映像美術の皆様、東宝スタジオ、照明の小嶋さん、貴重な照明機材を貸してくださった東宝スタジオ、ライトシップ、日本デザイナー学院、セットの保管場所提供の多摩美術大学の方々、そして企画担当の入江さんはじめフィルムセンターの方々、ありがとうございました。(2005.8.25)


 
 
‘ゆき子の部屋’再現セットが再び日の目を見るまで
竹内悦子
再現セットコメント寄稿
今年1月29日から4月10日まで世田谷文学館で行われた『生誕100年 映画監督・成瀬巳喜男』展で映画『浮雲』‘ゆき子の部屋’のセットが竹中さん監修のもと再現された。それを是非観ておく様にと、諸先輩方からアドバイスを受けたのは、セット再現が素晴らしいから、というのはもちろんだが、かねてより、当協会で美術監督の仕事とは?という啓蒙のための展示・イベントはできないか?と模索していたこともありあくまでも当時は、参考に!ということだったと記憶している。  

再現セットコメント寄稿
その後、ついつい見学の機会を逸していた4月上旬、突然、林さんと星埜さんから連絡が入り、『浮雲』のセットがリユース(再利用)の方向に動き出したとのこと。しかし、このセットがどういう形で日の目を見るのかは、この時点でもまだ具体的に決まっていなかった。

星埜さんが書いた4月13日付(有)吉田美術の吉田社長宛、翌14日付世田谷文学館主任学芸員、矢野氏宛FAXのコピーと私宛の申し送りに、リユースは一般公開、映像技能者研究材料、人材育成(映像教育機関での教材)を目的とし、移動保管に関するお願い、段取りが熱心に記されている。それにしてもかなり強引な事を企画したものだと思ったが、一部協会員の独りよがりではなく、映画評論家の大久保賢一氏、多摩美術大学の加納豊美助教授らの大きな協力もあって廃棄処分が一転、一時保管する事になったのだ。

4月15日、私は世田谷文学館で、一時保管先の多摩美で受け入れ準備をしている星埜さんと連絡を取りつつバラシ─セットの解体、積み込み搬出まで立ち会った。

再現セットコメント寄稿
が、撮影所等でのバラシとは違い、公共施設で、しかもリユースの為にはなるべく現状復帰しやすい形で解体していかなければならないし、搬入先の条件(入口の狭さ、ロフトへ上げる)もあり、吉田美術、棟梁の佐藤さんには普段と違う神経を使わせてしまい少々心苦しかった。また、文学館の矢野氏も搬出までの長い時間お付き合い頂き、今回のリユースを快く受け入れてくださっただけでなく、映画、映画美術へますます関心を寄せていただいている旨をありがたく感じた。


再現セットコメント寄稿
今、フィルムセンター7Fの会場奥で上映されているヴィデオに記録されているように、これで、ひとまず、一時保管は完了したのであるが、その後のリユースの具体的展開については、気にはなっていた。が、日々仕事に追われる中、恥ずかしながら、すっかり忘れていた。

次に私が関わったのは7月2日、東京国立近代美術館フィルムセンターでの打ち合わせから。それは、8月20日から行われる生誕百年特集の『映画監督 成瀬巳喜男』上映企画で、『浮雲』‘ゆき子の部屋’を再び展示できないか?という事である。センターの研究員、入江良郎氏の話によると、世田谷文学館の展示期間中からリユースの考えはあったそうだ。

が、色んな面で文学館との折衝が時間切れになりあきらめていたところ、当協会で一時保管されると聞き、是非実現したい、と思っていたという事だった。その日は、実際にフィルムセンターでセット展示が出来るのか?確認といったところであったと思う。



再現セットコメント寄稿
7階展示室ロビーに設置という事もその日に決めたが、矢内さんの報告にある様に、入れ込みはもちろん、搬入口、エレベーターの問題など物理的問題もあったが、予算の問題、時間的な事もかなり厳しく、取り急ぎ8月20日の初日に間に合うように林さんと星埜さんが、竹中さん、吉田美術、東宝映像美術、照明の小嶋眞二氏等へ連絡、段取りをとる事になった。 そこからは、このプロジェクトに参加してきたメンバーが各々の仕事の合間に協力参加となった。

私は、まず8月2日、多摩美、加納研究室からの搬出に立ち会った。たまたま吉田美術の作業場が移転する時期と重なったため、ご好意で空いている旧作業場で、フィルムセンターに搬入が出来る様に加工していただける事になった。今回は、フィルムセンターでの建て込みは、照明機材の設置等もありタイトな時間で行わなければならない。

それもあって、建て込み前日の18日に、実際に作業場にて建て込みのシミュレーションをやってみる事になった。



また、照明機材や細かい材料道具を当日車両がまわれないなどの都合で、東宝スタジオサービス、ライトシップ、日本デザイナー学院で御借りした機材を運び、翌日の確認等も行った。 残念ながら、8月19日の建て込み当日は参加できなかったが、数日後、頻発する地震対策もあって安全確認及び照明機材の設置補強の為に、閉館前の会場に伺った。映画上映の終わった後、4,5人が展示を観に7階に上がってみえていた。一般の人にとって映画のセットはどのように見えるのであろうか?ついつい人間ウォッチングしてしまった。中に入り、横から裏を覗き込む人もいれば、ゆき子の座るであろう座布団の前でじっと見ている人もいた。また螺旋階段の上から窓外の風景とともに眺めているカップルもいた。

再現セットコメント寄稿
今回の事業は、偶発的なようで、実は必然的な結果のようにも感じる。前にも書いたが、文学館での展示終了後の協力体制、フィルムセンターの依頼、また、今後の展示依頼もありうると聞く。また今回の記録映像も、東京藝術大学大学院映画教育運営室製作主任で映画美学校の講師の宮武嘉昭氏が中心となって、ほとんどボランティアで撮り続けて下さっている。その記録映像を何とか1つの作品として完成させようと企画をした星埜さんが助成金関係でも動いているそうである。なにかしら結果がついてくるようにも感じるが・・・・。

そして、私事ではあるが、この夏携わったテレビドラマのセットが再現されテレビ局で宣伝のために一般公開された。他にも、参考に観にいったNPOテレビ日本美術家協会の『街を劇的空間に!』展などの展示でも一般の人達がたくさん映像の裏側に興味を持って接していた。実際は、裏を知ってしまうとつまらなくなるような気もするが、垣間見る事によって、新しい発見、見方、感じ方もあるのかも知れない。そういう事が、今求められているのかも、とも思った。
(2005.9.20)
   
 

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