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986年8月号の「映像照明」に『セットに家相があるか』を寄稿したことがある。
それは、《明日の撮影に備え出来上がったセットを見回していると。

年嵩の大道具さんが来て「このセットは中々家相がいいね」と言う。「セットは家相など気にしてデザインしたことないよ」と私。「俺は家を建て直すときに研究したんだ、それでいい家が出来たよ」「それじゃセット相というのもあるのかな」....でその場は終わったが。

れがきっかけでセットにも家相を取り入れてみたら少しは良いものが出来るかなと清家清氏の『家相の科学』と『すまいの歳時記』。名著といわれる渋谷五郎・長尾勝馬両氏の『日本建築』などを引っ張り出して読んでみる。古代中国に始まり家や人間を守ることを基本とした家相が奈良朝のころ日本に伝来し、日本流に変化して人気がたかまった。『洛地準則』『八宅明鏡』『協紀弁方』『家相極秘伝』その他にも、古書、現今書、数多くの書籍がある.》といったものだった。
松竹大船撮影所では、〔美術だけが、ひとり歩きするような青臭い仕事をするな〕〔監督のイメージを越えることはいいが、それが足を引っ張るようではいけない〕まさに、監督ルネ・クレールのいう「映画では、最良のセットとは、人が気づかないものである」そのものが教え。ほかにも〔気持ちの入ったデザイン〕〔形から考えるデザイン〕〔建てやすいデザイン〕などいろいろの教えがあった。

んな事を考えながら図面を描く。一時期、平面図の形が美しいと良いセットが出来ると、ゴチョゴチョと平面をいじりまわす。又、大家ぶって、このセットのイメージは海でいこうかなど、かないもせぬことを考える。高橋治監督作品「七人の刑事」で事件の鍵となる喫茶店のセットがあった〔そうだ鍵だ〕と平面を鍵の形にした。打合わせで面白がってくれ、キャメラマンも照明技師も協力してくれたが、どう撮ってもぜんぜん駄目。野村芳太郎監督とは多くの仕事をしたが、セットで、家に帰ってくる、出かけ行くの受けかたが反対になった。平面を真逆にして描き直しても、また逆になることもあった。わざとではないのだが、監督は「また逆だね」と笑って、済ましてくれたが。平面図の描きかたを見ると、ほかのデザイナーは玄関を図面の下側、つまり手前から考えている。私はいつも玄関を上面にして描く。これは単なる癖かと思うのだが、それが逆のもとか....?

船作品はセットが多かった。普通作品で平均10〜15杯くらい。大作になると30杯ちかくなる。毎日デザインを描くことに明け暮れる。「このセットのイメージは」「きれいな形の平面図」。普段から、ぼーとしている頭はさらに壊滅状態。半分出来たころステージに入らないことに気がつく。1尺5寸づつ、つめる。大船撮影所で仕事をした方はご存知と思うが、セクションペーパーが5寸目盛りになっているので、1尺5寸・4尺5寸・7尺5寸などの寸法が使いやすい。タッパもそうなる。中2階の高さを7尺5寸にするか7尺が良いか7寸のことで悩むが、大道具さんは「かべの都合で7.5にしたよ」簡単だ。
そんなところに、家相が入ってきたら大変。出来上がったデザインのこちらが鬼門、この方向のキッチンは良くない反対側にしようか、形が崩れるな、もう駄目だ!また徹夜になる。セットに家相を取り入れるのは止め。ところがセット撮影の時、照明技師から「これはどちらが南なのか」とよく聞かれる。一戸建なら庭が造ってある方、マンションならテラスのある方、おおむね決まっている。幸せ家族の住む家や、マンションのセットは窓が大きく明るい日差しのありそうな間取りになる、事件などがおきる設定には、窓も少ない暗い凶相の部屋をつくる。なんとなくセットにも家相が存在する。自然に取り入れていた。

して 《 夏の強い太陽、冬の暖かさをくれる太陽、朝日も、夕日も、いずれも素晴らしい。家相も宅相も太陽に関係している。その太陽の一部を創り其の陰影を演出する映画。それで人間を描くことの出来る映画。それは素晴らしい吉相をもっていると思う 》と気障に結んでいる。

 

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