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長島 由明

もう1つの「出口のない海」

長島 由明

2005年に人間魚雷回天をテーマにした戦争映画「出口のない海」に携わっていた時、自分の中にはこの映画以外に、もう1つの「出口のない海」の物語がありました。それは、8月の暑い中、特攻兵器「回天」担当になった時から始まります。毎日台本の中に書き込まれている「回天」内部の細かな備品、操作方法などを踏まえ資料収集。靖国神社へ回天を見学に行ったりしましたが、なかなか回天内部写真がなく難航していたそんなある日、実物の「回天」がアメリカのシアトル郊外の海洋潜水博物館に展示してあるという情報が入りました。そして、あれよこれよと言う間に、シアトルに一人で美術ロケハンに旅立つことになるのです。実はこれが始めての海外でした。成田から飛行機に乗ってシアトルの通訳の人と空港で会うまで13時間、かなりの珍道中はありましたが、話が長くなるので省略します。

シアトルの空港から潜水博物館まで高速で約2時間、緑豊かなシアトル郊外に博物館はありました。まずは館長とあいさつ。会うなり館長「Oh!Japanese侍!」と一言。「まだ日本人は侍で、イチローじゃないんだぁ」と思いつつ、早速、通訳と館長と共に「回天」へ。直径1m、長さ15 mの「回天」が半分だけ外面の鉄板の覆いが外され、内部のリブが見えている状態で横たわっていました。まるで、食べ始めた焼き魚のように骨が見えていました。

まずは写真撮影から、骨と骨のわずかな隙間から中の備品を左から右へ順番に、次は回天の中に入って撮影と備品の採寸をしようと館長に許可を貰い、早速横たわる「回天」の上、センターにあるハッチから搭乗。まず目に飛び込んできたのは、ハッチ真下にある搭乗席の座席、背もたれに黒々と付いた異様なシミ、一瞬息を飲んだ。ちょっと待てよ、「回天」に搭乗したら脱出不可能で息絶えるのみと言う言葉が脳裏に過り、この「回天」に乗っていた人はすでに亡くなっていて、アメリカ兵に引き上げられた‥‥。このシミはその時の‥‥。一瞬座るのを拒みそうになったけど、シアトルに来た意味「侍魂!」を思い、ためらいつつ腰を下ろした。 腰を下ろしたはいいがあまりにも狭すぎて身動きが困難、直径外法1mに備品、配管、計器類がリブに付いているからである。 閉鎖感、座席のシミ、訪れる見学客の侍コール、横で通訳と館長が話している英語、汗が吹き出し頭の中は混乱していた。

こんな状態で採寸、まずは前方備品から。いざ体を前屈みにして測ろうと思ったが目の前にある潜望鏡が邪魔で体を曲げれず、メジャーを伸ばして前方の備品近くに下ろし、黙視して手元のセクションペーパーに1つ1つ備品の絵と寸法の殴り書き、自分しかわからないサインのように、次は体の後方備品。当然体ごと振り向くことは出来ず、頭をひねっての採寸。メジャーを備品に合わすのがかなり困難の中、やっとのことで撮影、採寸終了。

ハッチから這い上がり、館長に終りの挨拶をした時、寸法をメモしたセクションペーパーをコピーさせてほしいと言われ、自分しか解読できない暗号のようなメモは恥ずかしいので、日本に帰ってから綺麗に清書した図面を送ると何回も通訳を通して言ったけど、結局この暗号のようなメモがいいと館長に言われ、コピーを渡し、博物館を後にした。今、このメモは額に入って「回天」の横に飾られているかもしれない。やっとのことで「回天」内部撮影、採寸が終りホテルに16時ぐらいに戻り、1人旅たるプレッシャーから、飛行機では一睡もできず、徹夜状態であったため疲労感がどっときて、ベットで仮眠をとったのです。 ウトウトして間もなく体中の血の気が逆流していく気分になっていき、体が動かなくなり、目も開かない。 俗にいう金縛りだろう。いままでなったことない体の感覚。そのうち頭上を兵隊が行進していくのです。足音も聞こえているし「うわー!」っと思い強引に目を開けようと、もがき苦しみ、やっとの思いで、目を覚ましたのですが、頭の中には「回天」に搭乗したから取り憑かれたと思うしかなかった。

 

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