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カムイ外伝の外伝

石島 武

<準備段階において>

 先行して動いていたこの作品に合流したのが07年10月1日、他の美術部が動き出してから既に数ヶ月が経過していた。

 部屋の壁には絵や図面が壁一面に張り出されており、美術部各自の机の上には図面や資料が散乱している。
 佳境に差し掛かっていると思われる部屋の有様から してインまで約一ヶ月となった時点での合流は、この状 況に対して遅れている自分への負担が当然想像できたものの、実態は思ったほど進んではいなかった。

 この時、台本の完成を誰もが待ち望んでいた。作品へ込められた情熱と情念がそうさせるのか、原作があるとはいえこの作品の濃度をより濃いものにしようという欲求に絡れるが故なのか、台本の完成にはかなりの時間 を要した。

 だが待ってはくれない時間という実体の無いその影 から追われるように、各部スタッフはそれぞれの持ち場 ですべき事を考え、模索しながらも仕事を冷静に進めていくしかなかった。

<課題>

 この作品で最も大きな課題であるように思われたの が、沖縄に2つの「漁村」を造る事と「千石船」を用意する事 だった。2つの漁村の場所は沖縄県名護市と東村の砂浜が選ばれた。

 名護には物語の前半に出てくる村を作るのだが、ここは砂浜が平らな為、潮の満ち引きの影響を受けやすく、また当然天候にも左右されやすい。この砂浜を横断する川が集中豪雨により氾濫を起こしたことで、オープンセット内に掛けた芝居用の橋が何度も流されたり、低気圧の接近と同時に生じた高潮による海面上昇から、村の奥まで海水が浸水してきたりすることもあった。

 東村に建てた村は物語後半の舞台になる。こちらの村は前者とは対照的に森に囲まれた場所が選ばれた。ここの砂浜は傾斜がついており、名護の村程には高潮による影響は受けなかったが、それでも海上に建てたセットの船着場が崩壊する等のトラブルは起きた。

 千石船については、那覇市の「おきなわワールド」に琉球王朝交易船が幅8m全長31mという実物大で再現展示されているものを擬装、これを劇中の千石船とする事が決定された。船の擬装用に直径7?5寸程の竹を数百本、鹿児島県から調達、取り付け作業が開始され、同時に千石船に掛ける帆(幅8m×高10m及び幅4m ×高7mの各1枚)の作成が始められ、染色、縫製など

文字通り手作りで始められた。
 全ての作業が急ピッチで行われていたが、製作途中、諸事情により中断することになる。

これが07年12月下旬の事であった。

<再開に向けて>

 年が明けて08年5月、再開すべくスタッフに声が掛けられる。前回と全く同じではなかったが、ほぼ同じスタッフが集まる。
 関西から関東にロケ地は改められ、6月から8月に掛けての沖縄ロケ、その後東京に戻ってセット及び近郊ロケ、9月頃にアップという予定が組まれた。
 昨年12月の中断直後、セットを保存すべく砂浜にフェンスを建てたり、シートで覆ったりとはしてきたものの、風雨に晒したままのセットは復旧作業を必要としていた。

 沖縄滞在中、低気圧の接近に伴い、強風によりセットが傾く事があったりはしたが、一番気がかりだった”台風の直撃によるセットの崩壊、撮影の中断、復旧に向けての急ピッチな修復作業”といった大事が起きることはな く、滞りなくすんなりとはいかないまでも、撮影を続ける事が出来たことはとても幸運だったように感じる。
 それでも日々現場で起きる諸問題に対処しながら、「したいことではなく、しなければならない事」に追われる時間を過ごしていることに悔悟しつつも、狂宴とも狂騒ともつかぬ「毎日が夏祭り」のような沖縄分の撮影がやがて終わりを迎える。

 東京に戻ったのが08年8月。それから関東近郊ロケへと続き、神奈川、山梨、千葉、茨城各県への移動を繰り返し、その隙間を縫うようにセット撮影が行われ、その後ワイヤーアクションによる合成撮影、素材撮りの後、08年10月末、無事にクランクアップを迎える。
最も「夏祭り」の狂騒は結局秋まで続いていたが。

 残念だったことに、再開後の予算縮小ということが最後の最後まで現場に影響し続け、今後製作者側との話の進め方に課題を残した。
(とはいっても、どの作品にも毎回つきまとう問題であるとは思うが。)

ただ、大変だったことほど、よい酒のツマミになり、よき思い出にかわるんだよなぁ…。

 

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