2021年11月22日(月)〜11月25日(木)(4日間)
- 11/22(月)『近松物語』講師:花谷 秀文
- 11/23(火)『残菊物語』講師:萱谷 恵子
- 11/24(水)『楊貴妃』講師:竹内 公一
- 11/25(木)『源氏物語』講師:丸山 裕司
- 開催場所
- 調布市文化会館 たづくり
- 参加費
- 全日程 ¥2,000 1日 ¥500
日本映画・テレビ
映画美術スタッフ塾
SCHOOL
文化庁委託事業「令和3年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」
原作近松門左衛門の『おさん茂平』を元に川口松太郎が書いた戯曲を映画化、戦後溝口作品の中でも完成度の高い傑作となった。商家の女将と手代の道行とは、最初から身分違いのゆえに、臣下の忠義という感情に近かった。内向的で、つつましい、封建的規範を体現したような大和撫子の女性の変貌する姿が、古典を題材にとりながらいかにも現代劇にしている。
溝口監督と初めて一緒に仕事をしたのが『祇園祭』で以来『赤線地帯』まで18年間、21本の仕事をしている。その中でも特に印象に残っている作品の一本であると水谷本人ものちに語っていた。
溝口作品の中でも評価されている戦前の作品。歌舞伎、文楽、舞踊といった家柄が物を言う封建的な芸道の世界にあって、自分から立ち向かうのではなく、自分は弱い立場だということを表向きは演じながら男に尽くすことを通じて、女をして自分の意地を通す女、単なるメロドラマではなく女の意地を描いた作品。
この『残菊物語』は溝口監督の芸術としてのモニュメント的作品であり、あのワンシーンワンカットの中の凝集が長い凝視に耐えるセットの実質的な重量と、質の造形的な完璧さとそのスケールの拡がりとを要求されることになった。このことで水谷は美術監督としての情熱を燃焼させる絶好のモチーフでもあったといえる。
大映と香港ショウ・ブラザース社との合作による。
美術監督の水谷浩は、形の変わった時代劇という意味で「特に時代の性格を重要とする作品を具体化する場合には最も性格な考証による時代的雰囲気を必要とするものであって、然してその正確な考証に基盤をおいた実証と推理によって、美術という芸術的なデフォルメーションがなされなければならない」つまり「考証はあくまで素材であって、その正確な素材をもとに、映画的に美術構成し整理するというのが美術者としての仕事になってくるのである」と『楊貴妃』美術考でしるしている。
当時は映画化不可能とさえ言われた王朝物の古典を歴史的現実として描こうという吉村監督の意図で、その千古の美をたたえた平安の美の具体化は映画美術史に残る労作といってよい。
『源氏物語』の背景となる藤原時代の風俗を残す唯一の資料としての絵巻物も鎌倉時代のもので、『源氏物語』の最古のものといわれるものでも平安末期のものであった。そこで風俗、建築、庭園考証とそれぞれの専門家の学者陣に時代考証を願った。
細心の注意をもって王朝風俗の美術造形が試みられ、調度数も一々厳密な考証のもとに新しく制作された。
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